みうらおかだ(付記・唐沢)

10年前にみうらじゅんが取り上げたものを拾う唐沢俊一
http://www.podcasts.jp/episodes/%e7%ac%ac65%e5%9b%9e%e5%94%90%e6%b2%a2%e4%bf%8a%e4%b8%80%e3%81%95%e3%82%93%e3%80%80%e5%89%8d%e7%b7%a8-3664480.html
こんな動画:シコウヒンTV 第65回唐沢俊一さん(前編)*1

2ちゃんにてこの中の「海モノフィギュア」部唐沢トーク・ワーディングがなされている。
そのワーディング後半
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/books/1254452972/

158 :無名草子さん:2009/10/03(土) 13:37:25
えーただ私がその海ものをえ〜そうですね全部で多分2〜300点は集めていると思うんですけども、その中で一番好きな海ものっては実は正体不明のこれでございます。
注:目の高さにフィギアを差し出す
え〜とあるですね温泉地のですねお土産物屋のですねあの〜棚の奥の奥の奥の方に入った物で、もう名前が書いてあってなんだか正体が書いてあったらしいんですがもうこれ日に焼けて読めなくなっています。
え〜真珠 ですッね。え〜これ真珠をモチーフにしているので海の生物だと思うんだけども、なんとなくこけし風のかわいい顔が描いてあって体も真珠で真珠貝の処にもたれかかっているんだけども……、これ虫なのか?エ〜ヘッヘェ(何故か笑い始める)宇宙人なのか?なんなんだぁ?っていうのが何だか解らないままにですね、ま〜あの〜もーとても怪しい。
一目見ただけでも惚れてしまいまして、もうボクの物だッなんて感じになって、まーあのーこのーえ〜私が〜見つけなければたぶん誰の目にも止まらず(笑)消え去っていくというような運命にあったと言うようなことがあっただけに愛おしくてデスね。え〜私あの〜この何だか解らない、え〜フィギアをデスねタマちゃんたまちゃんと呼んで可愛がっているワケであります
え〜最近ちょっとずつですがなんか劣化してきましてですね、あのなんか真珠だと思っていたのは実際プラスティックの玉だったんだというのがゴニョゴニョ(笑いながらで音声不良)非常に哀れをもよおすというか。
そこら辺もまた私のシコウの一助という事になっているかも知れません。
え〜最初のシコウヒンはこの海ものフィギアという事でした。

この唐沢俊一の「一番好きな正体不明の海もの」について私はコメントしている

162 :discussao:2009/10/03(土) 14:09:01
(抜粋)最後の真珠を使った貝細工は、みうらじゅん『いやげ物』でカテゴライズされた「甘えた坊主」の派生物でしょう。

「甘えた坊主」画像はこちら
http://www.geocities.co.jp/Outdoors/8130/amaeta-bozu.html
唐沢が紹介しているものは貝細工だが、岩らしきものに本体がもたれ掛かり目をつむっていることから、みうらのいう「甘えた坊主」のバリエーションとして拵えたものだろうことがわかる。
『いやげ物』によれば「雪舟」とか「眠り一休」だとか言われながら台湾・タイ・中国でも同種の人形を発見されており、おそらくは禅画の「四睡図 」(寒山拾得、豊干と虎がもたれ合いながら眠る絵図)と同じ趣向の仏教系(あるいは道教系?)の偶像なのであろう。ストイックにもみうら本人はそういう民俗学領域には決して言及していないが。
唐沢が『いやげ物』をチェックしているか否か、私には判断できない。チェックしていて敢えてトボけている(「シコウヒン」をでっち上げるのが面倒くさかったなどの理由)とか。

また、前半部「バカログ」で紹介しているインド人演歌歌手チャダとアントニオ古賀の「クスリルンバ」は、みうらじゅんみうらじゅんのフェロモンレコード』にもある(文庫版『魅惑のフェロモンレコード』では異同があって「クスリルンバ」は無くなっている)。


10年前のみうらじゅんを模倣する岡田斗司夫
いっぽう唐沢をブースター代わりにステップアップした(らしい)岡田斗司夫も、最近みうらじゅんのスタンスを参考にしている旨発言している。以下はソロになって「ひとり夜話」というイベントのシリーズ化を計画し、最終目標として武道館・東京ドームを設定したステップ案での考察、
「岡田斗司夫のひとり夜話」その2 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな

これはみうらじゅんを模倣している(笑)。(みうらじゅんいとうせいこうと共に武道館での「ザ・スライドショー」のイベントというかライブ経験がある)
(中略)
ステップ4:2010年末〜2011年正月
岡田斗司夫祭り開催:みうらじゅんもこの辺り(引用者注:みうらのデビュー時を現時点の岡田に当てはめた時制で「この辺り」)で「みうらじゅん大物産展」をラフォーレ原宿でやっていた。

岡田は反省の意味も込め、何かに「なる」という欲望よりも「する」という具体性が重要な旨記述している。しかし岡田らしいのはその具体性が観客動員数という「結果」に表現されてしまうところで、このイベントで岡田が何を「する」かというコンセプトの話にならないかぎりあまり「反省」の甲斐はない。

みうらじゅんのスタンス(あくまでも10年前のみうらについて)
1.みうらじゅんは司会進行に興味がない。仕事で役が回ってきても、出来れば回避したいほど嫌悪している。「スライド・ショー」などの場合、いとうせいこうがヘタなみうら司会にツッコミをいれるスタイルであり、こういう変格的な型は楽しいという。
PEACE (角川文庫)
三谷幸喜が大昔みうらのラジオ番組台本を担当していたことがあって、当時を振り返りみうらが三谷台本をないがしろに進行していたのが悲しかった旨語っているが、みうらの三谷評価がどうなのかはさておき、みうらのこういった資質も大いに関与しているようにも推察される。
NOW and THEN 三谷幸喜―三谷幸喜自身による全作品解説+51の質問
2.『みうらじゅんのフェロモンレコード』上梓後、同書で取り上げたアナログ・レコードが中古レコード店で一時暴騰し、みうらのクズレコード偏愛熱はかなり冷めた。(例えば4〜500円で販売されていたレッド・ウォーリアーズ「アウトサイダー」や小林繁「亜紀子」などが突然2,500〜3,000円と結構なお値段になった。)
LESSON 1
3.『PEACE』にて業界向けプレゼンテーションへの嫌悪も述べており、本質的に自分の創出したジャンルが商売として成り立つことに関し距離を置いている(最近経済効果としては「マイブーム」を凌駕した感のある「ゆるキャラ」へのスタンスが典型)。みうらが商売としているのは、クズアイテムに入れ込んでいる自分であってアイテム自体ではない。アイテムに価値が無いのは自明の前提であり、そこに虚構の価値を見出して小さな世界観を創出する。みうらの商売領域はそういった虚構性の中での批評にあって、それはようするに「サブカルチャー」や「おたく」が語られる領域と同質のものであり、斎藤環戦闘美少女の精神分析』の<虚構性の実体化><ありものの虚構をさらに「自分だけの虚構」へとレヴェルアップすることだけを目指す><彼が尊敬されているとすれば、それは彼の抜きんでた虚構性創造能力によってであろう>という記述と完全に重なりあう。ここで斎藤のいう<彼>は岡田斗司夫のことなのだが、岡田にせよみうらにせよ、あるいは唐沢俊一にせよ、自己の批評性の高さが商売の本質(もしくは批評性の高さに由来する自己愛が本質)である点がこの世代の特質なのかもしれない。それでも三者のなかでみうらが最も「おたく」エリアから遠く、しかし最も虚構性の高い批評をしている(していた?)特異なポジションに立っている。
戦闘美少女の精神分析 (ちくま文庫)
みうらの特異性は
1.岡田との比較でいうと、「虚構」の自己完結性があげられる。みうらが、例えば岡田のような独特の「おたく」像のような概念を創造したとしても、それが他人とも共有しうる考えとして流通し一般化する流れとみうら本人は断絶している。それはみうらのマイナー志向といった捉え方で自他ともに了解されているが、むしろみうらの批評が「虚構」によって成り立っており、他者との共有感によってその「虚構」が侵食されるのを防ぐため自己完結しているのである。
最近の伊集院光との関係はじっさいのところよく知らないが、かつてふたりで『D.T.』を出した頃でも、「童貞」に関する伊集院とみうらのスタンスは異なっており噛みあってはいなかった。みうらが(若い頃)モテ男系ではなかったのは本当だとしても、みうらの「童貞」へのスタンスはかなり独自解釈のデフォルメがなされており伊集院という他者が入り込む余地は無かった。
D.T.
いっぽうの岡田は批評で売っているという自覚はあるが、そして自分の批評性が高いという前提で商売しているだろうが、岡田の売っているものは(一般化可能な)「岡田の批評」であって、みうらのような「虚構性の強い批評の手腕」といった正体の知れないような風情のものでは無い。岡田の商売の中で「岡田の批評」はあたかも取引可能な実体性をともなって存在しており、そのへんが「おたく」批評という観点からすると瑕疵になっている。それはけっきょく、みうらが自己の批評性に(はたから見れば根拠不明なほど)自信を持って疑っておらず、岡田のそれが脆弱というか、脆弱であることが問題にされず実利的に流通するほどのもので良いと岡田が思っていることの証であろう。

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いやげ物

いやげ物

カスハガの世界 (ちくま文庫)

カスハガの世界 (ちくま文庫)

とんまつりJAPAN―日本全国とんまな祭りガイド (集英社文庫)

とんまつりJAPAN―日本全国とんまな祭りガイド (集英社文庫)

*1:巷間言われている唐沢トークの致命的な欠陥だが、声質は共鳴する低音であり舞台・TVに向いている。みうらじゅんのザラついた声質と比較していただければ了解されると思う。またたいへん早口がキツイが、頭の回転の速い人間特有の癖であろう。と書くと「唐沢は頭いいのか?」という反論もあろうが、「常時アクセルを無駄に吹かしている運転の下手なドライバー」を想定していただきたい。「あの運転で本人機敏なつもりなんだから……」みたいなことである。そういった「頭の回転の速い人間特有の早口」の例からみても、たとえば小林信彦のそれに比べたら格段に落ち着いた口調といえよう。欠陥はむしろ、アイテムを紹介する際の妙なシャイさが気持ち悪いとか、そういった方面に発揮されているように感じられる。