サンカ隠語「オタカラシュウ」について

高島俊男『お言葉ですが・・・②「文芸春秋」の怪』<たくらだ猫の隣歩き>は、「たくらだ(名詞)」についての俗説を糾したもの。広辞苑にも引用された、<麝香猫(じゃこうねこ、これも創作動物か?)によく似た、田蔵田という猫科の生き物が語源云々、というのは足利時代の法螺話がもとで、元来「たくらだ」「たくらぶ=転ぶ」は純然たる和語という主旨。
いっぽう、三角寛礫川全次氏のサンカ文献諸誌によれば、漂泊民サンカの「オタカラシュウ」という、百姓を指す隠語については、確とした語源の説明はない。が、ニュアンスとして、百姓を敬って「お宝衆」という呼びかたを使った、みたいな純朴な接触交流が暗示されている。要するに、サンカ衆が自分の漂泊性を卑下し、百姓民を上に置いた表現である、という意味。
しかし、これは高島書が示すとおり、むしろサンカ自身の矜持をあらわしたもので、「オタカラ・タカラモノ」という、(サンカ用語ではない)愚か者をあらわす隠語と同じものであるのは明らか。
以上の話、知っている人は知っているのかもしれませんが、言及したものを見たことがないので、いちおうメモ書きとして。

お言葉ですが…〈2〉「週刊文春」の怪 (文春文庫)

お言葉ですが…〈2〉「週刊文春」の怪 (文春文庫)