デビィーズとベイカー・ショップ・ブギ

グループ・サウンズ(GS)の中でもデビィーズは、どちらかと言えばあまり知られていないバンドだろう。
正式名称はデビィーズなんだけれどThe Davy'sという綴りのせいか、他にデビーズ、デヴィーズなどの表記もある。Davyさんという方の存在がバンド結成のきっかけとなったことから命名されたそうです(Davyさんが中心となって結成されたという表現もあるが、おそらく間違いだと思う)。1967年に結成された北海道ローカルのバンドです。
メンバーはヘンリー高谷(guitar)、青山明(dr)、邦たか志(org)、加山健次(b)、清水英二(vocal)。遠藤実のレーベル、ミノルフォン・レコードより、1st「青いささやきb/w恋のサイケデリック」('68年)、2nd「エルムの恋b/wベイビー」('69年)の2枚のシングルを発表、'70年にいったん解散しました(現在では未発表曲「女の子」「君を送っていこう」もCD化されています)。
2枚目のシングルはAB面とも作詞水島哲、作曲ベン・ミラー(遠藤実の変名)。1枚目は、作曲が両面ともK.Arai、作詞は「エルムの恋」が山口あかり(『まんが日本むかしばなし』の「にんげんっていいな」が有名)、「恋のサイケデリック」が安井かずみ
この「恋のサイケデリック」が、あの鈴木いずみのSF小説『なんと、恋のサイケデリック!』のタイトルに借用され、地味な存在だったデビィーズはカルトGSとして知られるようになった。

と、ここまでは大概のGS関係のところに書いてあること。
1982年の暮れに出た月刊宝島臨時増刊号『ロッカーズ1983』という本があって、この当時のメジャー、マイナー含めてのバンド図鑑となっていた。この本に札幌のバンド「ベイカー・ショップ・ブギ」の項目があり鳥井賀句が担当している。その記述に、

前身は沢内明が作っていたデビーズで、ブルース・ハウス、神経質な鶏への出演を契機にベイカー・ショップ・ブギと改名。

とあったのを、GS関係を洗い直していた時期にチェックしていて、それからずっと気になっていた。黒沢進もデビィーズとベイカー・ショップ・ブギの関係については言及していなかったので、誤記に当たる事柄なのか、あるいは、「マイ・ラブ、マイ・ラブ」のヤンガーズのドラマー永井光男が後の「キッスは目にして」ヴィーナスのジョージ・ナガイなのと一緒で、あまり知られていない話なのか不明だった。
で、けっきょく今では不明でもなんでもなく、BAKER SHOP BOOGIEのホーム・ページがあってバイオグラフにしっかりThe Davy'sのことが記されており規定の事実となっているようでしたBAKER SHOP BOOGIE。もっと早くに調べればよかった、人に訊いちゃいましたよGSブログ デビィーズ「エルムの恋」。だからデビィーズのドラマー青山明が後年の澤内明さん、ってことになるのかな?

鈴木いずみも、けっして良く知られた作家ではないけれど、大森望は『恋のサイケデリック』を熱く語っている鈴木いづみコレクション『恋のサイケデリック』(文遊社)解説

だからぼくは、「青い稲妻」をBGMに『恋のサイケデリック』を読み返す。鈴木いづみはいつだって“いま”の作家なのだから。

青い稲妻」ってのは「青いささやき」(デビィーズ1stシングル)の間違いってワケではなくて、スマップの「青いイナズマ」。鈴木いずみもリアル・タイムに「恋のサイケデリック」を愛聴していたんじゃなくて、後に近田春夫のラジオのGS特集で知ったということです。
楽曲としては「恋のサイケデリック」、たいへんこねくり回して頭で作った印象が強いにもかかわらず、とってもチャーミングな音楽ですね。AメロがBooker T & the MG's の「 Hip Hug Her」風で、ベイカーズへの萌芽ともとれます。今なら youtubeで聴くことが可能。

バンド名ゆかりの曲。以前ロカビリーの話題のときにでたサン・レコードのリリース。

カルトGSコレクション*ミノルフォン編

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ベーカー・ショップ・ブギ+2(紙ジャケット仕様)

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鈴木いづみコレクション〈3〉 SF集(1) 恋のサイケデリック!

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恋のサイケデリック

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コンプリート・シングルズ

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キッスは目にして!

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まんが日本昔ばなし(1)

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ヴェリー・ベスト・オブ・ブッカーT&MG’s

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