湘南スリラー劇場『水少年』

「湘南スリラー劇場」という名も無いバンドの曲。湘南スリラー劇場についてはUEKING ROOM » 連載「ギターを抱いたUeking」 #2この程度のインフォメーションしかない。
しかしなんだろう、ウエキングって。オタキングならしってるけど。
この歌の歌詞は中井英夫の年譜に出てくる習作のタイトルによる。
http://homepage2.nifty.com/tsuhara/nakai/chronological.html

1929年 東京高師付属小学校入学。同級に鶴見俊輔がいる。この前後「水少年」「足の裏を舐める男」などの妄想小説を書く。

虚無への供物 (講談社文庫)

虚無への供物 (講談社文庫)

源氏山公園の桜に中年姉妹の首吊りがあった次の日、酔狂にも五月雨のなか桜を見に出かけた。今なら中高年の孤独とか貧困として考えるだろうこんな事件を、昔は猟奇的な好奇心で捉えていた。それは朝倉喬司『犯罪風土記』なんかの影響が強かったからだ。
犯罪風土記

犯罪風土記

首を吊った桜はすぐに見つかった。通路の真上に横に太目の枝が張り出した木が公園中央にあり、その下にバリケードが円を描いて設置されていたからだ。辺りにはひと一人おらず、そぼ降る雨に周りはけぶり視界は20mも聞かない。無音の世界がしばらく続いたかと思うと、思い出したように鴉か野良猫の鳴き声が沈黙を破った。桜の枝に痕跡は認められなかったが、周りがあんまり舞台じみていてロープが垂れ下がったままでもおかしくはなかった。
新聞によると、姉妹は一本のロープの両端に輪を作り枝から向かいあうように垂れ下がっていたそうだ。
その日の亡羊としたイメージも歌詞のベースとなっている。ほかに宮沢賢治『若い木霊』や小室等『庭(作詞・谷川俊太郎)』も参考(パクリ?)にしてるかもしれない。宮沢賢治 若い木霊
いま 生きているということ
あと斉藤由貴終わりの季節』とか。PANT(紙ジャケット仕様)




そよ風吹いて 水面にしじま
梢が歌う   宿り木燃やせ

雨足ひいて  虹影ひとつ
木霊が呼んだ ふりむかないで

水が迸る ぼくの体から 宙に降りそそぐ
だれか  ぼくの手をとって
水が迸る ぼくの体から 宙に降りそそぐ

寒天空に溶けた雲雀よ
おまえの囀る唄は嘘ばかりじゃないか

水が迸る ぼくの体から 宙に降りそそぐ
だれか  ぼくの手をとって
水が迸る ぼくの体から 君に降りそそぐ


(出来てしまったものを改めて聴くと、「顔射」についての歌のような気もするが。)