岡田斗司夫サンのモノレール・フリークぶり

岡田斗司夫『オタクの迷い道』を読んでいたら、<さぁ君も、モノレールの前で僕と握手!>というコラムがあった。オタクのカテゴリーの中でもマイナーな部類となるモノレール・オタクであるという告白文で、同好の士に威勢のいい檄を飛ばしている。おお、奇遇ですねぇ、私は鉄道オタクの気はさっぱりなんですが、通学に利用していた時期もあったせいか「モノレール」という響きにはつい反応しちゃうんですよねぇ。もちろん岡田サンほど濃い嗜好ではないのでお恥ずかしいですが。ディズニーリゾートライン以外の関東圏の現存モノレールは、一度は一定期間利用していたことがある程度のことしか自慢にならない、ヌルい話なんですが……。岡田サンはロケットとか模型にも造詣が深いので、いつもの変につっかかってばかりの文句は控えて、ここは虚心に大家のお言葉に頭を垂れようと読み進めたのですが……。

君たち、知ってるか?モノレールにはまたがる跨座式と、レールにぶら下がる懸垂式の2種類あるんだぞ。世界最初のモノレールは、1824年にスコットランドで作られて、木のレールの上を、馬に引かれて走ったんだぞ。世界最初の商業モノレールは、1959年、ロスのディズニーランドに登場したALWEG式で、今のは、4代目なんだぞ。

う〜む。生まれて最初に乗ったのが跨座式(東芝式)のドリームランド線で、2番目が懸垂式(サフェージュ式)の湘南モノレールだから、「君たち、知ってるか?」と訊かれたら、「良く知っておりますとも!」と答えるしかない。それよりも、「世界最初の商業モノレールが1959年」というのが気になってしまった。岡田サンは何をもって「商業」と規定しているのかしら?てかそれより開通の古いヤツ、東京にあったよね?
岡田斗司夫の未来玩具』って本には<Monorail System>と銘打ったコーナーがある。これは岡田サンのグッズ・コレクションが主体の本で、文章は写真キャプションや短文が大半なのだが、これを読むと、娘さんと出かけた上野動物園で遭遇した上野モノレールに刺激されてモノレール熱に火がつき、’97年秋のスーパーフェスティバル会場で5万円はたいて買ったモノレールの玩具「スカイモノレール」がコレクターの第一歩だったと仰せになられる。’97年というと『オタクの迷い道』('99)や『未来玩具』('98)の執筆時期からするとメチャクチャ最近、岡田サンにわかファンだったのね……。
で、その『未来玩具』のモノレール話の枕になっている「上野動物園モノレール」なんだけど、1957年末開業だから、岡田サンのいう「ロスのディズニーランドのALWEG式」のより1年以上早いんだけど、上野のヤツは「商業」じゃないのかな?

いろいろ調べてみると、<世界最初のモノレール>の記述も問題で、1824年という年に準拠すると、英国のヘンリー・パルマー考案による荷物輸送用モノレールがロンドン近郊に施設されている(正確に言うと1824年デプトフォード造船所に荷物輸送用が、翌'25年ハートフォードシャーに旅客輸送用が開設された)が、岡田サンの言う「スコットランドで作られた世界最初の」ヤツってのはこのことでしょうね。岡田サンの意味するのは、スコットランドで車体を作ってロンドンに持って来たという意味かいな?ま、そういった資料は無いみたいだし、History of Monorailsの図のような体裁のモノなのでおそらく現地製造、スコットランドは間違いだろうね。あるいは、ものの本によっては「1888年に本格的なモノレールがラルティグによってアイルランドのリストウェル―バリバニオン間15キロに敷設」という記述もあるので、「アイルランド」と「スコットランド」を間違えたのか……?

まぁ何をもって最初とするかという問題もあるけれど、現在もっともポピュラーに「世界最古」と見做されてるのは独のヴッパータール空中鉄道Wuppertal Suspension Railway - Wikipedia(1901年開設、現在まで運行中)
のようです。


ヴッパー川の上を走行するモノレール(懸垂式・ランゲン式)。なんといっても、街中はアーチ状に、水上はコンパス状にと変化する、両サイドに掛かった支柱の美しさに魅了される。

オタクの迷い道 (文春文庫)

オタクの迷い道 (文春文庫)