そもそもの1968年・失神の年

月刊基礎知識より
http://www.jiyu.co.jp/GN/cdv/backnumber/200304/topics01/topic01_01.html

◆失神/気絶
脳の血流低下によって起こる一過性の意識消失。脳貧血とも。しばしば興奮状態やストレス状態から起こる。失禁や痙攣を伴うこともある。
最近は聞かれない「コンサートでの失神」というものが“流行”したのは、1968年、グループサウンズ・バンド「オックス」(失神バンドの異名をとる)によるもの。キーボード担当の赤松愛がステージ上で失神すると、それに連られて失神する観客(もちろん少女)が続出、という集団催眠的状況をさす。

◆失神
本誌1970年版より〔1967年のことば〕。
女優の応蘭芳が、インタビューに答えて「私って失神するの」と発言、にわかにクローズアップされた言葉。続いて、セックス作家の川上宗薫が、失神作家と呼ばれた。もちろんこの場合の「失神」は、女性の恍惚の極致にみられる現象ではある。

「◆失神」の項の記述が下記の阿久悠の本のと似てますね。




阿久悠『夢を食った男たち』
6章<鎮魂歌を歌わないために>――「失神の時代」

この年の流行語は「失神」である。1968年、昭和四十三年のことである。ほかにも、サイケ、ハレンチ、ピーコック革命、昭和元禄などがある。
(中略。――とはいえそんな流行語ほど現実は単純じゃなくて、いろいろあったという要旨――)
さて、「失神」であるが、そもそもは、女優の応蘭芳が女性週刊誌でしゃべったエクスタシーの表現で、その後、川上宗薫の小説をさして失神小説と呼んだり、失神作家といったりしたが、グループ・サウンズ最後のアイドルのオックスも流行語に貢献している。
オックスがデビューしたのは1968年であるが、グループ・サウンズ・ブームも三年目に入り、さしもの勢いも、やや後退の気配を見せ始めていた。
しかし、オックスの人気は先輩格のタイガースやテンプターズをしのぐ感さえ抱かせ、もしかしたらブームの延命が期待できるのではと、思わせるほどであった。
オックスは、タイガース以後の宝塚的雰囲気の本流で、歌も徹底した抒情、それに失神という異様な現象が加わったものだから人気は爆発した。
オカッパ頭のソロ歌手の赤松愛が、歌のクライマックスで失神するとそれにつれて、コンサートの女性客もバタバタ倒れるというのだから衝撃的である。
もちろん、遠隔催眠や集団陶酔ということもあるから、やりすぎた演出と決めつけるわけにはいかないが、この騒ぎがブームの最後の徒花的役割を果たしたことは否定できない。

メンバーの後年になってのインタビューなどを参考にすると、大阪時代からステージングの一環としてはじめていたということです。クライマックスになると(正確にはオルガン担当の)赤松愛が楽器に飛び乗ってもろともステージ床にひっくりかえると、ボーカル野口ヒデトが錯乱した演技の上前のめりに倒れ込み、ドラムはセットをひっくり返す、というような流れであったそうです。もちろんこういう演出は基本的にはあざといわけで、ほかの「真面目に音楽を追求してる」GS、たとえば井上堯之(『スパイダースありがとう!』)などにとっては迷惑で不快な話題であり、本人たちの回想でも受けを狙ってなのか自嘲気味に語る場合もあるようです(岡田志郎・福井利夫など)。しかし野口ヒデトのものなど読むと、あざとさ先行のギミックとだけ決めつけるのも少し違うかなぁと思います。たとえば同時期にテンプターズショーケンが手錠・目隠しで「孤独の叫び」を絶叫したりしてますし、最近の例でいえば忌野清志郎のマント・ショーだってじゅうぶんにあざといわけです(JBのを模倣したわけで、そこには「批評性」があるのは承知しております)。上記の「失神」でいくと、赤松愛にはナイス・ELPのキース・エマーソンと、ドラム岩田裕二にはザ・フーキース・ムーンプリティ・シングスのヴィヴ・プリンスとの共通性が見出せます(音楽スタイル・テクニカルな面は除外)。


野口ヒデト 失神のシーン
愛ちゃんはともかく、福井利夫のスティック・ワークと2バス・ドラムは間違いなくキース・ムーンですね。

應蘭芳は映画『あるセックス・ドクターの記録』雑誌取材で「セックスの時の失神は毎日よ」と言ったのがスキャンダルなブームとなったという話(http://sen1818.exblog.jp/972864/)。ィヨコワケ・ハンサムじゃないので、このへんはあんまりよく知らなかった(「渚のエクスタシー」はさすがに知っているが・・・)。
http://gendai.net/?m=view&g=geino&c=070&no=16487


オックス・コンプリート・コレクション

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