『珍・UFO入門』(贋作・唐沢俊一文)
以下文は細部で妙に整合性のあるデータが含まれている場合もあるが、根本的には虚言で塗り固められた駄文である。
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出世魚というのをご存知だろうか?昔は豊臣秀吉のように出世に伴って名も改めたことから、魚でも成長するごとに呼び名を変えたものがあり、ボラやスズキが良く知られている。今回紹介するのはSF界の出世魚ことUFOである。
UFOが稚魚だった60年代前半は素朴なスペースオペラの全盛時であり、UFOなどというシャレたいい方はなかった。このころは欧米ではフライング・ティーポット、和訳すれば「空飛ぶ急須」という呼称が一般的だったが、これはケネス・アーノルド事件からデヴィッド・アレンが提唱しはじめた。彼の名を広めたラジオ・ノーム三部作は、ゴング星から空飛ぶ急須に乗ってやってきた異星人(♀)と超能力を持つ日本人喜多西福夫がおりなす壮大なスペース・ラヴ・ストーリー。日本ではハヤカワSF文庫でシリーズごと松本零がイラストを担当し爆発的なヒットとなった。ただし「空飛ぶ急須」だと日本ではあまり受けないと感じていた関係者は、和訳の際に一考を案じて「空飛ぶ円盤」とした。これによりステータスが若干上がり、UFOは出世のスタートを切ったのであった。
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ラジオ・ノーム2作目。福夫大活躍。世界的福夫ブーム到来。
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イラストは松本零士
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勢いをつけた松本零士はヴィジュアライズしたノースウエスト・スミス像を自作「キャプテン・ハーロック」で再生させ、これも大ヒットさせている。この「キャプテン」モノは亜流を生み、「キャプテン・スカーレット」「キャプテン・フューチャー」「キャプテンEO」「キャプテン&テニール」「キャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンド」、和モノで「キャプテン翼」「好きよキャプテン」などの便乗モノが巷にあふれた。「好きよキャプテン」はエイプリル・フールを解散した松本零が日本製のスペース・オペラを確立させるために結成したリリーズの2枚目。リリーズはこの後鈴木茂をリード・ギターに入れて、おちゆうじのアドバイスで「はっぴいえんど」に改名する。これもまた出世魚である。
なお「キャプテン&テニール」と「キャプテン・ビーフハート」は続きモノで、21世紀のコミケを舞台にキーボード兼アレンジャーの「ドラゴン隊長」とグラント・ピープル「検証ハーン」が小競り合いを引き起こすプロットであったが、隊長役の魅力に乏しく親玉との対決まえに頓挫した。作者ドン・ヴリートは筆を折り、現在は人っ子一人いない砂漠で絵を売るという、つげ義春の「無能の人」を地でゆく生活を送っている。
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かように松本零士はメジャーとなったのだが、ノースウエスト・スミス・シリーズのイラストや「戦記モノ」シリーズをこよなく愛し、ハヤカワ文庫などでSFの門を叩いたわれわれのような少数派エリートは、水増しされたヤマト・ブームには当初から冷ややかであった。
松本零士の美しさといったら、メカと美女が2大アイテムであろう。あの計器類に象徴される、キャンパス地でできたようなヒューマン・タッチのメカ類。内面性などいっさい描写されず、細長すぎる手足と豊満な胸腰が食物代謝より光合成を連想させる典型としての美女。いずれもリミテッド・アニメごときでは表現不可能であり、それに熱狂している時点でヤマト・ブームに踊らされた輩は松本零士ファンとして失格だった。
そんなSF開発途上にあったわれわれ日本人に新世界の啓示をあらわしたのが「謎の円盤UFO」であった。この番組によって「未確認飛行物体」という言葉が認知され、空飛ぶ円盤はUFOという新しいステージにあがった。
じつはこの番組誕生にもフライング・ティーポットのデヴィッド・アレンが深く係わっている。新作構想を練るため紅茶を飲みすぎて英国政府から国外追放されたアレンは、オーストラリアに戻り羊飼いになってしまった。アレンの意思を継いだ英国のティーポット・ファンたちは「UFOクラブ」というスペースを設立し、ここからピンク・フロイドやソフト・マシーンといった有望株が育った。ピンク・フロイドは盗作者・・・もとい、倒錯者を描いた「アーノルド・レーン」をヒットさせ、ソフト・マシーンは大御所ジミ・ヘンドリックスに認められ前途洋々であったのだ。しかし彼らにしても英国特有の紅茶偏愛の癖が抜けず、過飲による精神の変調から次々に脱落していった。こういった才能の浪費を残念に思ったプロデューサーのジョー・ボイドは、まず手始めにピンク・フロイドのリーダー、シド・バレットのサイコ的ソロ「帽子が笑う・・・不気味に」に尽力をつぎ込む。つづいてソフト・マシーンのケヴィン・エアーズ(ペンネーム=ケヴィン・アイアーズ)の紹介で東南アジア時代の恋人ガブリエル・ドレイクを知り、その弟の作品「ピンク・ムーン」をTV用にリライトしてこれが「謎の円盤UFO」と題され大ヒットした。
ガブリエル・ドレイクは弟のよしみでゲイ・エリス中尉役を得て、紫色のカツラとセクシーな肢体で番組に華を添えた。嘘だと思うならこれをご覧あれ。
番組内に登場するコンピューター衛星「シド」がシド・バレットの名に由来するのは有名なエピソード。なおジョー・ボイドの奮闘もむなしく、シド・バレットならびにガブリエルの弟ニック・ドレイク、両者ともに紅茶の飲みすぎで人生をリタイアしてしまった。
ニック・ドレイクを追想する座談会でのガブリエル・ドレイクとジョー・ボイドの動画
http://fora.tv/2007/10/02/Remembering_Nick_Drake_and_his_Music
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日本のカルト・バンド「タロット」
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時代は下って1977年12月、日本の歌謡グループ・ピンクレディーの「UFO」が10週連続1位で155万枚を売り上げた。この時からUFOはユーエフオーからユーフォーと呼び方が変わる。フライング・ティーポットが空飛ぶ円盤に格上げされたように、ユーエフオーがユーフォーに出世したわけである。
ところでこのピンクレディー(いうまでもなく「ピンク・ムーン」からつけられた命名)というグループは変わっていて、作詞家阿久悠らが作り上げたコンセプチャル歌手であった。ふつうの人気歌手はアイドル(=偶像)であり、歌はアイドル性を保障するアイテムに過ぎないのだが、ピンク・レディーは歌われた対象が「ペッパー警部」や「カルメン」や「指名手配者(ウォンテッド)」や「モンスター」「サウスポー」といった偶像(=アイドル)であり、歌い手本人たちは偶像を写しだす空虚な鏡に過ぎなかった。ピンクレディーの革新性はここにあり、’78年「カメレオン・アーミー」6週1位70万枚を最後に、’79年3月の「ジパング」(最高2位27万)で失速したのは擬人化ヒーロー創出による偶像システムを放棄してしまったことが敗因だろう。文字通りまさに「偶像(アイドル)堕つ」、である。ぐははは。フォーリン・アイドルである、ぐははは・・・あれ、Fallen Idolだからフォーレン?フォールン?キング・クリムゾン「レッド」Fallen Angelは一時フォーリンだったよなあ・・・ここは三原順子「だって・フォーリンラブ突然」でお茶を濁そう。Fallin' In Loveが「堕落した愛」に変わってる。
なおピンク・レディー命名の由来にはもう一説あり、当時ベストセラーだった山崎朋子「サンダカン八番娼館」から売買春批判として「嬪夫(ピンプ)・レディー」というネーミングが候補に上がったが(お茶の間の顰蹙をかった「ペッパー警部」開脚の振り付けはこれにちなむ)、しかしここでも売れない作家ドン・ヴリートから横槍が入り、自作「ポン引きウィリー (Willie The Pimp) 」とバッティングしないようクレームしたことから、ピンクに変えたという眉唾の噂がもっともらしく流布していた。
こうして大出世したUFOであったが、日本では大衆化の波に心無くも浚われてしまい、SFのステータスはとうとう築けなかった。残党松本零は80年代になっても「宇宙戦士スターボー」などで再起を謀ったが、無残な結果におわる。松本の古臭さに業を煮やしたパートナー細野は宇宙コンセプトを捨て、UFOならぬYMOを結成しこれが80年代を席捲したのだった。
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以下参考(あるいは無断引用)しました
mailinglistの日記・「フライングソーサーは「飛ぶ皿」である、そして、円盤投げの円盤が飛ぶのは当然だ」
http://d.hatena.ne.jp/mailinglist/20090826
同・「偶像は落ちるか」
http://d.hatena.ne.jp/mailinglist/20090827
唐沢俊一検証blog・「止マレ!」
http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20090824
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