『だまされることの責任』佐高信&魚住昭 120〜124頁要約

あるいは<「自己責任論」の萌芽>

魚住
僕はジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』(岩波書店)を読んでいて一番印象に残ったのは、孤児の話なんです。戦後、戦災孤児が街にいっぱいあふれていた。ところが日本人は彼らをろくに救おうとはしない。ほったらかしにしている。それを見た外国人から「なんでああいう子どもたちをほうっておくんだ」と聞かれて、作家の大佛次郎は「日本人は他人への愛情に欠ける国民だ。愛情の湧く場所の底が低いのだろうか」と思ったそうですね。

(中略)『敗北を抱きしめて』には戦争未亡人と戦災孤児の話が出てくるんですが、一度脱落した人間に対するものすごく冷たい視線、切り捨ててしまう視線というのが、日本の社会構造の中にある。

佐高
中国残留孤児の問題ですが、年齢的に定年前後の人がいきなり日本で暮らそうとしても、年金の受給資格もなく、経済的に大変なわけです。厚生労働省の役人は「生活保護を受ければいい」というが、生活保護を受ければ、貯金はできない、養父母を見舞いに中国に行けば、その間の支給を打ち切られるというように、非人間的な扱いをされる。そのために、彼らは国家賠償を求めて裁判を起こしていますが、政府は決してその責任を認めようとはしません。

だまされることの責任

だまされることの責任