芥川龍之介の出生について

芥川龍之介は明治25年(1892)三月朔日(ついたち)東京市京橋区入船町(現・中央区明石町)に、父新原敏三、母フクの長男として生まれたが、父42歳母33歳の大厄の子であったため、捨て子扱いとして敏三旧友の松村浅二郎が拾い親となり、後フクの実家芥川家に預けられ養子となる。義父芥川道章は東京府土木課勤務*1。家は本所小泉町。
新原敏三は山口県玖珂郡賀美畑村出身の平民と紹介されている。入船町で牛乳販売業を営み、同町と新宿に牧場を持っていた。西井一夫『「昭和二十年」東京地図』に記述される<耕牧舎牧場>は上記の新宿牧場と思われるが、龍之介の「養父」が経営していた、としているのは誤記か?
あるいは、実父と養父が共同で牧場経営し、つまり養父はお役所勤めと二足のわらじを履いていた、ということなのだろうか?よくわからない。
新宿牧場の地は太宗寺裏に当たり(今の新宿二丁目)、当時「牛ヶ原」と呼ばれていた(江戸時代は伊澤美作守屋敷)が、大正10年(もしくは5〜6年)この6千坪の地に新宿追分より遊郭が移転してきた。太宗寺裏は売春禁止法施行まで赤線として残る。以下うろ覚えだが、たしか牧場は今の歌舞伎町のほうに引越し、その土地の名も「牛ヶ原」のまま引き継がれた、と記憶する。敗戦前後「歌舞伎町」に改称。

新編「昭和二十年」東京地図 (ちくま文庫)

新編「昭和二十年」東京地図 (ちくま文庫)

羅生門・鼻・芋粥・偸盗 (岩波文庫)

芥川龍之介は有名なヤツより、「たね子の憂鬱」のようなサラッとしたスケッチみたいな作品が凄く好きです。

*1:ということは、歴史研究者・菊池山哉の先輩に当たる