『暴走機関車』[読書]『高校二年の四月に』

TV東京で午後、『暴走機関車』を放送していたので、予約録画しておいた。
この映画は、黒沢明原作ということで巷間知られていますが、個人的には脚本に作家のポール・ジンデルが絡んでいるのが気になっていた。
日本では、ポール・ジンデルはけっして高名な作家とはいえない。今比較的手に入りやすいのは、『アップルバウム先生にベゴニアの花を』。1998年発行された、中学生以上向きのジュヴナイル小説だ。
1974年の『高校二年の四月に』も、おなじく中学生以上向きのジュヴナイル小説という体裁だった。これを中学のときと、20代中頃、読んだ。
中学のときとても良かったので、二十歳すぎてからちいさな公民館の本棚で再会したときは、懐かしい想いとともに、はたして再読に耐えられるかどうか不安でもあった。そのとき隣に恋人がいたので、貸し出しを勧めてみた。姑息にも、まず恋人の感想を見てから、自分も読むかどうか判断することにしたのだ。
『高校二年の四月に』は、原題は確か<Pigman>だったと記憶する。原題のほうが素敵だと思うけれど、この題じゃちょっとジュヴナイル向きではなかったのかな?
話は、ピッグマンと呼ばれる、豚の玩具コレクターの老人と少年少女の交流を、思春期と老(死)という軸を交えて描いたもので、ジュヴナイルの定石に則って、生と死の問題についてはたいへん大甘な結末だ。
『アップルバウム先生』のほうも、アップルバウム老先生と生徒の交流の話で、これはポール・ジンデルの基本モチーフのひとつなんだろう。
恋人は『高校二年の四月に』をいたく気に入り、やっぱり中学生のときの自分は間違ってなかった、と、ほっとした。ジュヴナイルは侮りがたい。大甘とはいえ、肝要を押さえれば立派な物語となる。
そういえば、斎藤美奈子氏が宮部みゆきの小説を、ただの「ジュヴナイル」と評していた(あるいは、「コバルト文庫」といったのだったか?)。まぁ、ちょっとムカついたのですが。斎藤さん口が悪いのが商売だから。
宮部みゆきは、ジュヴナイル小説を書ける性能を持つ、ほぼ唯一稀有な現代作家だとおもう。けれど、個人的には『ステップ・ファザー・ステップ』という作品以外は、ジュヴナイルの範疇に収まりにくい。
あっ、『暴走機関車』の話ができなかった。
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とりあえず、『アップルバウム先生にベゴニアの花を』はこちら

アップルバウム先生にベゴニアの花を (世界の青春ノベルズ)

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