「如何なる星の下に」

この、高見順の小説を豊田四郎が映画化した1962年発表の作品を、夕食のお相伴に観返してみる。
このあいだTVで放送した市川崑監督の‘61年作「黒い十人の女」と、2人キャストがかぶっていて、それが、五社協定事件で翌‘63年引退を余儀なくされる山本富士子と、売り出し中だった植木等だ。
植木等は、「如何なる星の下に」の3ヵ月あとの「ニッポン無責任時代」ヒットによって、以後忙殺を極めることになる。
驚くのは、既に「無責任男」のキャラクターが完成していることで、共演の(といっても絡んではいないのだが)森繁久彌を喰っている。そのシャープさ、ドライさは、お話が深刻なこともあって、というか豊田四郎にユーモアのセンスがないだけに?、「無責任」シリーズの平均(たいらひとし・植木の役名)より、よりいっそう抜きんでた印象。さしずめ、<黒い「無責任男」>?
植木等演ずる大屋五郎は、山本富士子の妹(池内淳子)を捨て、そのまた妹(大空真弓)をたぶらかす歌手。捨てられ、睡眠薬を飲んで入院した池内淳子のベッドに寄り添う山本富士子と、病室の壁にもたれ、煙草をふかしながら経緯を説明する植木等のシーン、

五郎:驚きだよまったく、大東TVのスタジオの前でねぇ、ボクの来るのを待ってたらしいんだけれど、ボクを見るといきなり、「五郎ちゃん!アンタいつあたしンとこと戻ってくるの?」ッ(て)こぉ〜うだ・・・。ボクもねぇ、こないだンことがあるから、こりゃ〜マズイ雰囲気になってきたなと思ったんだ・・・。そん時ゃぁ、もう睡眠薬飲んでたらしいんだなぁ・・・ツいてねぇなぁ〜、俺も・・・<と煙草を床に捨て、靴で揉消す>。しょうがねえ、ボクもいきなり抱き上げてここに担ぎ込んだんだけどねえ、なんでも〜、命がどうのこうのってなぁ、今夜の具合によるだろうッてなことを医者ぁ言ってたけど、<急にうれしそうに>ありゃあヤブだなぁ<笑、山本富士子振り返ってキッと睨む>

いや、すばらしいです、植木等。ほのかに小泉首相とダブる印象もある。
たのしいところはこの植木等と、飄々と芸人くずれのダメ親父を演じている加東大介西村晃は、やっぱりモダンだから―というか、正統派コンプレックスの人だから―ひょうきんに演じようとして、とっても臭いし、森繁は森繁スタイルが固まってしまい、こちらに迫ってくる感じがない(と個人的には思う←なんとなくこわいので逃げ腰)。

とはいえ、「女の一生」路線のストーリーで悲劇だから、全体は暗い。
フジコちゃんは小津安二郎の「彼岸花」が、とっても明るくてカワイイけど、ほかは「女の性」みたいなのばっかりで、なんだか割り喰ってる気がする。

このイラスト(ロボット三等兵)に深い意味はない

如何なる星の下に (新潮文庫)

如何なる星の下に (新潮文庫)